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旬報社WEBセミナー「退職」第2回「実践編」リポート!

弊社刊行の嶋﨑量『最新テーマ別[実践]労働法実務4労働者が円満退職するための法律実務』のWebセミナーは、8月17日(月)17時に第2回を終えました。
第2回は実践編として、「使用者から労働者に対する損害賠償請求・類型」「仕事のミスを理由とする損害賠償請求」「競業避止義務・名誉毀損」などについて裁判例などもふまえながら解説していただきました。

使用者からの留学費用や研修費、サイニングボーナスの返還請求については、労基法16条(賠償予定の禁止)や労基法17条(前借金の控除禁止)との関係が問題となり、留学費用等の返還については、業務命令ではなく労働者の自由意思・自発性に基づくものか、返還免除期間や対象範囲が過大でないか等から判断されると解説されています。
例えば、返還免除期間が6年におよぶなど、労働者の退職の自由を著しく制限するような合意は無効と判断された裁判例(医療法人K会事件)もあるとのことでした。
また近年、人手不足や退職妨害を背景に、ミスや引継ぎ不足を理由として退職者に会社が損害賠償を請求するケースが増加しているとした上で、しかし、労働契約には民法の一般原則をそのまま適用せず、「労働法的修正」の視点を意識することが重要と解説されています。
労働契約は、業務命令に不可避的にミスが内在化すること労働契約が結果達成ではなく行為を求める「手段債務」であること報償責任・危険責任の法理(利益を得て危険を生み出している使用者が損害も負担すべき)労働者の生存権保障・人たるに値する生活の理念(労基法1条1項)などを踏まえ、裁判例では「軽過失免責」とし、労働者に故意または重過失(著しい注意義務違反)がある場合にのみ、かつ損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度(茨城石炭商事事件最高裁判決など)でしか賠償・求償を認めない判断が多くなっているとのことでした。
また、不当な損害賠償請求訴訟に対しては反訴(不法行為に基づく慰謝料請求など)で対応する手法も紹介されています(プロシード事件)。
退職後の競業避止義務退職後の競業避止義務は、憲法22条1項で保障された「職業選択の自由」を制約するため、原則として義務を負わず、誓約書等の合意があっても「必要かつ合理的な範囲」でなければ公序良俗に反し無効となり、その判断の考慮要素として、①禁止目的・必要性、②退職前の地位・業務内容、③禁止される業務範囲・期間・地域、④代償措置(手当等)の有無などを挙げられています。また、労働者が自由な意思で同意していない場合(誤った情報に基づく場合等)も効力は生じないと解説されています。
名誉毀損および労働組合活動・身元保証名誉毀損について、漠然とした指摘に対しては対象となる表現を具体的に特定させることが重要であり、事実の摘示か意見論評かに応じて公益性・真実性などの違法性阻却事由を検討すること、また、正当な労働組合活動に基づく街頭宣伝や要望書送付等は民事免責(労組法8条)や正当行為として違法性が阻却される(プレカリアートユニオン事件)と解説されています。
身元保証契約は極度額(上限額)の定めがないものは無効(民法465条の2)であり、責任の有無や額の算定には一切の事情が考慮され、公務員個人に対する市民からの損害賠償請求は原則できないとのことでした。
最後に、相談対応における実務上の意識会社側から圧力をかけられている労働者は強い不安や萎縮を感じているため、まずは寄り添う「共感と安心感の付与」が不可欠です。一方で、「訴訟にはならない」と断定的な予測を伝えることは避け、経済合理性を無視して提訴してくるリスクも視野に入れた説明を行うことが重要であると結論付けられています。